いる。事実人々は或る事物を個物として知ろうと欲する時、即ちそれがもつ個性を多少なりとも明らかにしようとする時、その事物と他の事物との連続を仮定した上で、最初に両者の限界を見出し、かくて両者の区別を与えることによって目的の第一歩を達したものとするであろう。個物(個性)は常に限界[#「限界」に傍点]を与え得られることを以て、その最初の概念規定とするのである。次に、仮りにこの個別化原理が、個物と個物との間隙を埋めていた当の連続を否定したとして見よう。残るものは断続的な原子である。個別化原理は原子[#「原子」に傍点]に至って働きを停止する。原子(A−tom)は分割し得ざるもの、もはや個別化し得ざるものを意味し、そしてこれこそが個物(In−dividuum)であるのである。かくて個別化原理の終点に於て、個物(個性)の概念は原子[#「原子」に傍点]として、分つべからざる単一者として(時には又モナドとして)窮極的に現われる。
個物の概念が、従って又個物のもつ個性の概念が、常に個別化原理と共に――普遍者への関係に於て――しか理解されない所以が之である。個別化の原理に於て、個物(個性)は他との限界[#
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