あると想像されることは許されない*。たとい人々が或る立場から出発し、又はそう信じたとしても、夫は、単にその立場が立場として攻撃の余地のない完全な整合を有っていたからではなく、実は寧ろ立場以前の或る他のもの[#「或る他のもの」に傍点]に人々が前以て関心していたからこそ、初めてその立場が選ばれたのであるに外ならない。――吾々はこの単純な一つの事実上の関係を明らかに握っておくことが必要であったと思う。そして立場以前のこの或るもの[#「或るもの」に傍点]として、吾々は恰も「問題」の概念を注意するのである。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
* 事物の還元性と優越性とは別である。凡ての人間は国民に還元[#「還元」に傍点]されるからと云って、国民であることが例えば彼の道徳の優越[#「優越」に傍点]なる意味に於ける勝義の第一の出発・原理――性格――であることにはならないように。
[#ここで字下げ終わり]
 一つの立場は単に整合であるが故に採用されているのではない。何となれば吾々は既に、夫々整合でありながら而も相互に矛盾さえする二つの異った立場の代表的な一例を見ておいたから。そうではなくして
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