の歴史的運動とそれではどう関係するのか。――個人の性格も亦時代の歴史的運動によって終局的に制約されなければならないであろう。何となれば個人は時代という歴史的全体に対する一つの歴史的部分であるが、個人の歴史的運動[#「歴史的運動」に傍点]――それは前の説明によれば個人を理解し又之を待遇することによって生ずる運動であった――は時代の夫に終局的に帰着しなければならない、そして個人の歴史的運動に寄与するものこそ個人の性格でなければならない筈だからである。この点に於て個人は事物と少しも異る処を有たないであろう。処が個人は事物と異ってその歴史的運動の自覚[#「自覚」に傍点]を有っている。そしてこの歴史的運動――それは自己解釈(自覚)乃至自己待遇(行為)として現われる――に寄与するものとして自己[#「自己」に傍点]の性格を意識しているのである。性格のこの自己意識によって個人の性格は何か任意な他から独立な自由として現われることが出来るのである。併しながら自覚されたる自己の性格は必ずしも真の性格ではないことを人々は注意しなければならないであろう。彼が一人の詩人として自己の性格を見出したということは、少し
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