回転を機能せしめるものが夫々の事物の性格に外ならない。一切の事物は夫々の時代の切線の方向に於て性格づけられる。そして時代のこの切線は又、恰も、時代の性格[#「時代の性格」に傍点]と呼ばれているであろう。蓋し事物――歴史的部分――の歴史的運動は終局に於て時代――それは最も代表的な歴史的全体である――の歴史的運動に帰着する筈であったから、事物の性格は又終局に於て時代の性格に帰着するのが当然であるであろう。
事物の性格は、人々が事物に達する通路としてあることを、その特色とするのであった。事物の性格は人々の性格に相関的である。そこで人々[#「人々」に傍点]の――個人[#「個人」に傍点]の――性格が問題となる。如何なる性質を或る事物の性格として択ぶかは一方に於て、人々の夫々の性格に依存すると考えられる。そして人々の性格は人々によって云わば任意であり得るように見えるから、事物の性格も亦任意のものとして把握されそうである。処が他方すでに事物の性格は時代の歴史的運動によって終局的に制限されていなければならなかった。従って事物の性格は任意のものとして把握することを許されない筈であった。個人の性格は時代
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