しても、それが必ずしも歴史的現段階性[#「歴史的現段階性」に傍点]によって制約されていることを意味するのではない、ということである。従って、丁度それだけの意味に於て(但しそれ以上の意味でではないが)、自然科学にとっての現実は、超時代的[#「超時代的」に傍点]であり、永久不変[#「永久不変」に傍点]である、ということも出来る。そこでは歴史上、従来の理論内容を優越して特権を主張する根拠となり得るような、従来無かった新しい地盤[#「新しい地盤」に傍点]は、原理的には――偶然的にはどうか知らない――無い。先人の業績を、それが過去のものであるが故に、夫を批判し得るような、そのような資格を有った新しい立脚地は原理的には無いのである。新しい時代の性格に立脚することによって、自然科学を新しく建設し直すべき動機が、常に必ず働かねばならぬということは、絶対にない。かくして伝習された従来の自然科学を、改めて批判・検討し、依って之を否定・止揚し得るような場合は、ただ極めて偶然な[#「偶然な」に傍点]事情に基くのであり、従って至極稀な[#「稀な」に傍点]機会をしか持たないことは当然である。既成の自然科学の現在に
前へ 次へ
全268ページ中216ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング