に、自然科学に現われる諸概念も亦この二重性を反映する。というのは吾々は、必ずしも自然科学的知識によって教えられない前に、又は之とは区別された、自然的諸概念を有つ。と共に又自然科学にとって媒介されて初めて知り得る限りの自然的諸概念をも無論有つ。例えば運動の概念は、存在と無との、一点での存在と他点での存在との、対立的矛盾者の総合として、概念される。この運動概念は、必ずしも自然科学によって教えられたのでもなく、又夫によって訂正されるべき筋合のものでもない。却って自然科学的認識に対して、夫は何等かの指示をさえ与え得るかも知れない位置にあるのであろう。運動概念は自然科学的知識から区別されて、歴史上にも之に先立って、弁証法的なるものとして把握される。実際之は夙にエレアのゼノンの天才によって見出された処のものである。之に反して現代物理学にとっては運動の第一の物理学的規定は、必ずしもその弁証性ではない。ここでは運動は空間座標と時間軸との比一般として、ただ計量的にのみ定式化され(物理学的にはただ計量し得るものだけが存在する)、かかる諸運動の分類・相互関係・資格の相違・等々の観点に於てのみ第一義的に規定さ
前へ 次へ
全268ページ中210ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング