るのであった。
 性格とは事物の支配的な性質であり優越な性質である。その事物の他の一切の性質は、性格という資格をもつ一つの性質によって支配せられ優越せられ、かくて事物の表面的な形式的な公的な交渉からは隠される。その代り事物の諸性質の集合意志は性格を代表者として議席に送る。性格は議場に於てそれが代表する事物の権利を主張する、事物は性格の能力の如何によって夫々異った取り扱いを結果として招くのである。さてどの性質が性格として択ばれるべきかは全く政策にぞくする。そしてこの政策は例えば理論的計画として、人々の手に、通路に方法に、横たわる。
 性格が方法的であることは今や明らかとなったであろう。併し方法的であることは常に実践的[#「実践的」に傍点]であることを意味する。性格は実践的規定を有たねばならない。日常的な具象的事物をそのまま静止したものと見るのであっては、それがどうあるかを知ることは出来ない。事物はどう実践的に取り扱われ得るかによって初めてその性質を明らかにする。事物を取り扱う――理論的に又実際的に――という正に実践的な折衝に於て、代表者として機能するものが性格であるのである。性格はただ実
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