点]であるのはただこのような意味に於てであり、それが通路[#「通路」に傍点]を用意し方法[#「方法」に傍点]的であるというのも従って亦この意味に於てである。性格とはそれ故最後に、歴史的運動の動力因子として働くものの謂である。性格は優れたる意味に於て歴史的である。それが人間的[#「人間的」に傍点]であった所以である。

 日常的な具象的事物――そうではない事物に就いては知らない――に就いて、その理論[#「理論」に傍点]――それはこの事物の一つの歴史的運動である――は、それであるから性格[#「性格」に傍点]によって制約せられていなければならない。性格概念はここに一つの理論的使命[#「理論的使命」に傍点]を持っているのである。処が吾々が理論を論ずる今のこの理論――それは理論という日常的な具象的事象に就いての理論である――に於て性格として機能するものが、とりも直さず又性格概念[#「性格概念」に傍点]であるのである。云い換えるならば、吾々が性格概念[#「性格概念」に傍点]を取り出すことによって、理論一般に関する理解を運動せしめることが出来ると云うのである。茲に性格概念の理論的使命の第二の場合が横たわるであろう。
 今まで日常的な具象的事物をそうでない事物から区別して取り扱って来たことを吾々は思い起こそう。日常具象的でない事物を吾々は、学問の対象としてのみ存在すると考え得られる事物であると云った。この二つの種類の事物の区別は、恰も之までに規定した性格概念によって与えられる。性格的事物[#「性格的事物」に傍点]と非性格的事物[#「非性格的事物」に傍点]。前者に就いては性格[#「性格」に傍点]が語られ後者に於ては之に反して恐らく本質[#「本質」に傍点]が語られるであろう(本質と性格との区別は前を見よ)。性格的事物に就いては人々は性格的概念[#「性格的概念」に傍点]を有つことが出来、之に反して非性格的事物は非性格的概念をもつ。性格的概念とは性格的事物の把握・理解としての一つの働き――運動――の動力因子でなければならないが、性格的事物自身が性格的である故に通路を用意しているから、この事物はこの把握・理解という通路に於て運動せしめられることによって、少しも自からの事物としての性格を失わないであろう。即ち性格的事物[#「事物」に傍点]は性格的概念[#「概念」に傍点]として理解せられることに
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