、他方吾々はすでに、自然科学が当然[#「当然」に傍点]この階級性を有ち得ることを見ておいた。かかる容易さ[#「容易さ」に傍点]は自然科学が一つの歴史的存在である限りの歴史肯定[#「歴史肯定」に傍点]の契機から由来したものであった。二重性のこの二つの契機によって、自然科学のこの階級性は、一方に於て至極困難[#「困難」に傍点]なものとして、他方に於ては之に反して至極自明[#「自明」に傍点]なものとして、意識される理由があったのである。
今やこの困難と容易さとの意識の矛盾の真相を、もっと立ち入って突き止める段に来る。併しその方向はすでに伏線として与えられている。すでに吾々は、自然科学の歴史的制約が常に変装[#「変装」に傍点]されていねばならぬことを見た。歴史的制約がその一定形態[#「一定形態」に傍点]を、そのままの姿又は之と一定形態の関数関係に於てある姿を以て、自然科学へ伝えることは出来ない、と云った。この意味で、この制約は自然科学に於て常に間接[#「間接」に傍点]でしかあり得なかった。そしてこの間接さが決して、直接さに対する単なる程度の差ではなくして、歴史的現段階のもつ現実に立脚しない[#「ない」に傍点]という、積極的な内容をもつものであることも明らかにしておいた。そこで今や次のことが結果する。歴史が科学へ一定の形態的制約[#「形態的制約」に傍点]を与えるのは、その科学が歴史的現段階[#「歴史的現段階」に傍点]のもつ現実に立脚するということを意味する、と。裏を言えば、科学が歴史的現実に立脚しないということは、それが歴史によって形態的には[#「形態的には」に傍点]制約され得ないということと、一つである、と。
この結果を自然科学の理論内容の論理――真偽関係――に適用すれば、自然科学的理論は歴史的現段階の現実に立脚しなかったから、それであるからその論理は、歴史によって形態的には[#「形態的には」に傍点]制約され得ない、こととなる。なる程自然科学の論理内容は、その個々の場合々々[#「個々の場合々々」に傍点]に就いては、断片的[#「断片的」に傍点]には、偶然的[#「偶然的」に傍点](per accidens)には歴史的社会的制約を蒙る可能性及び必然性があるだろう。それを実は吾々は、第三[#「第三」に傍点]階梯の階級性として指摘して来たのであった。併し自然科学はそれにも拘らず、
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