「て、問題はこのようなものとして、立場の概念を優越すると云うのである。問題は性格的であればこそ――歴史的使命を持てばこそ――、それ自身問題であることによって一列の他の諸問題を展開することが出来る――前を見よ。問題[#「問題」に傍点]を突きつめるということは、理論の内容を展開し豊富にすることを意味する。試みに立場[#「立場」に傍点]――論理的整合――を突きつめて人々は何を得るか。それは常に理論の稀薄化と性格の疎外との外ではない。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
* 現代の問題を吾々は決して広い意味に於ける時事問題に限らない。そうではなくして一切の問題が現代の問題という資格を持っているというのである。現代の問題としてのこの資格を明白には自覚せず又そうする必要のないような問題――没性格的な問題――は、多かれ少なかれ、かかる資格からの抽象[#「抽象」に傍点]として理解される。もしそうでなければ例えば数学の体系と数学の歴史とを区別する標準はどこにもないであろう。
[#ここで字下げ終わり]
或る一つの理論[#「理論」に傍点]を批判[#「批判」に傍点]し得んがためには、徒に夫が基く立場[#「立場」に傍点]の成立不成立を論ずることに人々は満足すべきではない。之に満足し得るような人々によって否定され得る程それ程他愛なき立場に基く理論は、思うにおのずから歴史社会的に淘汰されて消滅して了っているであろう。それであるから人々は、理論が何を問題[#「問題」に傍点]とするかを第一に見極めることが最も必要なのである。理論の動機をなす処の問題を理解しない限り、その理論は理解されたのではない。さて第二にその理論が持っているこの問題が果して性格的[#「性格的」に傍点]であるか否かを人々は決定し得なければならない。之を決定し得ず又は決定することを知らないならば、この理論の歴史的(社会的)意味を理解することは原理的に不可能であるであろう。この二重の手続きを経て何等かの理論[#「理論」に傍点]は初めて批判[#「批判」に傍点]されたことになるのである。もしそうでなければ所謂批判とは単に論理の帳尻を合せることか、それでなければ一つの科学的漫談でしかない。
[#改段]
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[#ここから大見出し]
論理の政治的性格
――主に問題[#「問題」に傍点]との関係に限る――
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