の顔をじっと見る様子より、起居《たちい》の荒さ、それよりも第一|癇癪《かんしゃく》が似たとは愚か亡くなられし男爵そのままという者もありき。
江戸の敵《かたき》を長崎で討《う》つということあり。「世の中の事は概して江戸の敵を長崎で討つものなり。在野党の代議士今日議院に慷慨《こうがい》激烈の演説をなして、盛んに政府を攻撃したもう。至極結構なれども、実はその気焔《きえん》の一半は、昨夜|宅《うち》にてさんざんに高利貸《アイスクリーム》を喫《く》いたまいし鬱憤《うっぷん》と聞いて知れば、ありがた味も半ば減ずるわけなり。されば南シナ海の低気圧は岐阜《ぎふ》愛知《あいち》に洪水を起こし、タスカローラの陥落は三陸に海嘯《かいしょう》を見舞い、師直《もろなお》はかなわぬ恋のやけ腹を「物の用にたたぬ能書《てかき》」に立つるなり。宇宙はただ平均、物は皆その平を求むるなり。しこうしてその平均を求むるに、吝嗇者《りんしょくもの》の日済《ひなし》を督促《はた》るように、われよりあせりて今戻せ明日《あす》返せとせがむが小人《しょうじん》にて、いわゆる大人《たいじん》とは一切の勘定を天道様《てんとうさま》の銀行に
前へ
次へ
全313ページ中66ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング