が嫁に?――それはまあ――そして先方《むこう》は?」
 「先方は法学士で、目下《ただいま》農商務省の○○課長をいたしておる男で、ご存じでございましょうか、○○と申します人でございまして、千々岩《ちぢわ》さんなどももと世話に――や、千々岩さんと申しますと、誠にお気の毒な、まだ若いお方を、残念でございました」
 一点の翳《かげ》未亡人の額をかすめつ。
 「戦争《いくさ》はいやなもんでごあんすの、山木さん。――そいでその婚礼は何日《いつ》?」
 「取り急ぎまして明後々日に定《き》めましてございますが――御隠居様、どうかひとつ御来駕《おいで》くださいますように、――川島様の御隠居様がおすわり遊ばしておいで遊ばすと申しますれば、へへへ手前どもの鼻も高うございますわけで、――どうかぜひ――家内も出ますはずでございますが、その、取り込んでいますので――武――若旦那様もどうか――」
 未亡人はうなずきつ。おりから五点をうつ床上《とこ》の置き時計を顧みて、
 「おおもう五時じゃ、日が短いな。武はどうしつろ?」

    十の二

 白菊を手にさげし海軍士官、青山|南町《みなみちょう》の方《かた》より共同
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