、薄月夜ほどの光を地に落とし、やせたる狗《いぬ》ありて、地をかぎて行けり。
武男はこの建物の影に沿うて歩みつつ、目はたちまち二十間を隔てて先に歩み行く二つの人影に注ぎたり。後影《かげ》は確かにわが陸軍の将校士官のうちなるべし。一人は濶大《かつだい》に一人は細小なるが、打ち連れて物語などして行くさまなり。武男はその一人をどこか見覚えあるように思いぬ。
たちまち武男はわれとかの両人《ふたり》の間にさらに人ありて建物の影を忍び行くを認めつ。胸は不思議におどりぬ。家の影さしたれば、明らかには見えざれど、影のなかなる影は、一歩進みて止《とど》まり、二歩行きてうかがい、まさしく二人のあとを追うて次第に近づきおるなり。たまたま家と家との間《なか》絶えて、流れ込む街燈の光に武男はその清人《しんじん》なるを認めつ。同時にものありて彼が手中にひらめくを認めたり。胸打ち騒ぎ、武男はひそかに足を早めてそのあとを慕いぬ。
最先《さき》に歩めるかの二人が今しも街《まち》の端にいたれる時、闇中《あんちゅう》を歩めるかの黒影は猛然と暗を離れて、二人を追いぬ。驚きたる武男がつづいて走り出《いだ》せる時、清人はすで
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