うと倒れぬ。
 敵艦の発《う》ち出《いだ》したる三十サンチの大榴弾《だいりゅうだん》二個、あたかも砲台のまん中を貫いて破裂せしなり。
 「残念ッ!」
 叫びつつはね起きたる武男は、また尻居《しりい》にどうと倒れぬ。
 彼は今|体《たい》の下半におびただしき苦痛を覚えつ。倒れながらに見れば、あたりは一面の血、火、肉のみ。分隊長は見えず。砲台は洞《ほら》のごとくなりて、その間より青きもの揺らめきたり。こは海なりき。
 苦痛と、いうべからざるいたましき臭《か》のために、武男が目は閉じぬ。人のうめく声。物の燃ゆる音。ついで「火災! 火災! ポンプ用意ッ!」と叫ぶ声。同時に走《は》せ来る足音。
 たちまち武男は手ありてわれをもたぐるを覚えつ。手の脚部に触るるとともに、限りなき苦痛は脳頂に響いて、思わず「あ」と叫びつつのけぞり――紅《くれない》の靄《もや》閉ざせる目の前に渦まきて、次第にわれを失いぬ。

     二の一

 大本営所在地広島においては、十|月《げつ》中旬、第一師団はとくすでに金州半島に向かいたれど、そのあとに第二師団の健児広島狭しと入り込み来たり、しかのみならず臨時議会開かれんと
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