して、弾《だん》は弾と空中に相うって爆発し、海は間断なく水柱をけ上げて煮えかえらんとす。
「愉快! 定遠が焼けるぞ!」かれたる声ふり絞りて分隊長は叫びぬ。
煙の絶え間より望めば、黄竜旗《こうりょうき》を翻せる敵の旗艦の前部は黄煙渦まき起こりて、蟻《あり》のごとく敵兵のうごめき騒ぐを見る。
武男を初め砲員一斉に快を叫びぬ。
「さあ、やれ。やっつけろッ!」
勢い込んで、砲は一時に打ち出《いだ》しぬ。
左右より夾撃《きょうげき》せられて、敵の艦隊はくずれ立ちたり。超勇はすでにまっ先に火を帯びて沈み、揚威はとくすでに大破して逃《のが》れ、致遠また没せんとし、定遠火起こり、来遠また火災に苦しむ。こらえ兼ねし敵艦隊はついに定遠鎮遠を残して、ことごとくちりぢりに逃げ出《いだ》しぬ。わが先鋒隊はすかさずそのあとを追いぬ。本隊五艦は残れる定遠鎮遠を撃たんとす。
第四回の戦い始まりぬ。
時まさに三時、定遠の前部は火いよいよ燃えて、黄煙おびただしく立ち上れど、なお逃《のが》れず。鎮遠またよく旗艦を護して、二大鉄艦|巍然《ぎぜん》山のごとくわれに向かいつ。わが本隊の五艦は今や全速力をもって敵の
前へ
次へ
全313ページ中213ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング