入れるなるべし。舷窓《げんそう》をば火光《あかり》を漏らさじと閉ざしたれば、温気|内《うち》にこもりて、さらぬだに血気盛りの顔はいよいよ紅《くれない》に照れり。テーブルの上には珈琲碗《かひわん》四つ五つ、菓子皿はおおむねたいらげられて、ただカステーラの一片がいづれの少将軍に屠《ほふ》られんかと兢々《きょうきょう》として心細げに横たわるのみ。
「陸軍はもう平壌《へいじょう》を陥《おと》したかもしれないね」と短小|精悍《せいかん》とも言いつべき一少尉は頬杖《ほおづえ》つきたるまま一座を見回したり。「しかるにこっちはどうだ。実に不公平もまたはなはだしというべしじゃないか」
でっぷりと肥えし小主計は一隅《いちぐう》より莞爾《かんじ》と笑いぬ。「どうせ幕が明くとすぐ済んでしまう演劇《しばい》じゃないか。幕合《まくあい》の長いのもまた一興だよ」
「なんて悠長《ゆうちょう》な事を言うから困るよ。北洋艦隊《ぺいやん》相手の盲捉戯《めくらおにご》ももうわが輩はあきあきだ。今度もかけちがいましてお目にかからんけりゃ、わが輩は、だ、長駆|渤海《ぼっかい》湾に乗り込んで、太沽《ターク》の砲台に砲丸の一つ
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