ゆまず、目まじろがず、口を漏るる薩弁《さつべん》の淀《よど》みもやらぬは、戯れにあらず、狂気せしにもあらで、まさしく分別の上と思えば、驚きはまた胸を衝《つ》く憤りにかわりつ。あまり勝手な言条《いいぶん》と、罵倒《ばとう》せんずる言《こと》のすでに咽《のど》もとまで出《い》でけるを、実の娘とも思う浪子が一生の浮沈の境と、わずかに飲み込みて、まず問いつ、また説きつ、なだめもし、請いもしつれど、わが事をのみ言い募る先方の耳にはすこしも入らで、かえってそれは入らぬ繰り言《ごと》、こっちの話を浪の実家《さと》に伝えてもらえば要は済むというふうの明らかに見ゆれば、話聞く聞く病める姪《めい》の顔、亡き妹《いもうと》――浪子の実母――の臨終、浪子が父中将の傷心、など胸のうちにあらわれ来たり乱れ去りて、情けなく腹立たしき涙のわれ知らず催し来たれる夫人はきっと容《かたち》をあらため、当家においては御両家の結縁《けちえん》のためにこそ御加勢もいたしつれ、さる不義非情の御加勢は決してできぬこと、良人《おっと》に相談するまでもなくその義は堅くお断わり、ときっぱりとはねつけつ。
 忿然《ふんぜん》として加藤の門を
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