《さい》と娘の顔をかれよりこれと見やりつ。
「ここだて、なお豊。少し早いようだが――いって聞かして置く事があるがの。卿《おまえ》も知っとる通り、あの武男さんの母《おっか》さん――御隠居は、評判の癇癪《かんしゃく》持ちの、わがまま者の、頑固《がんこ》の――おっと卿《おまえ》が母《おっか》さんを悪口《あっこう》しちゃ済まんがの――とにかくここにすわっておいでのこの母《おっか》さんのように――やさしくない人だて。しかし鬼でもない、蛇《じゃ》でもない、やっぱり人間じゃ。その呼吸さえ飲み込むと、鬼の※[#「※」は「おんなへん+息」、第4水準2−5−70、123−15]《よめ》でも蛇《じゃ》の女房にでもなれるものじゃ。なあに、あの隠居ぐらい、おれが女なら二日もそばへいりゃ豆腐のようにして見せる。――と自慢した所で、仕方ないが、実際あんな老人《としより》でも扱いようじゃ何でもないて。ところで、いいかい、お豊、卿《おまえ》がいよいよ先方へ、まあ小間使い兼細君候補生として入り込む時になると、第一今のようになまけていちゃならん、朝も早く起きて――老人《としより》は目が早くさめるものじゃ――ほかの事はどう
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