あお隅、今日《きょう》ちょっと千々岩《ちぢわ》に会ったがの、例の一条も大分|捗《はか》が行きそうだて」
 「まあ、そうかいな。若|旦那《だんな》が納得しやはったのかいな」
 「なあに、武男さんはまだ帰って来ないから、相談も納得もありゃしないが、お浪さんがまた血を喀《は》いたンだ。ところで御隠居ももうだめだ、武男が帰らんうちに断行するといっているそうだ。も一度千々岩につッついてもらえば、大丈夫できる。武男さんが帰りゃなかなか断行もむずかしいからね、そこで帰らんうちにすっかり処置《かた》をつけてしまおうと御隠居も思っとるのだて。もうそうなりゃアこっちのものだ。――さ、御台所《みだいどころ》、お酌だ」
 「お浪はんもかあいそうやな」
 「お前もよっぽど変ちきな女だ。お豊《とよ》がかあいそうだからお浪さんを退《の》いてもらおうというかと思えば、もうできそうになると今度アお浪さんがかあいそう! そんなばかな事は中止《よし》として、今度はお豊を後釜《あとがま》に据える計略《ふんべつ》が肝心だ」
 「でもあんた、留守にお浪はんを離縁して、武男はん――若旦那が承知しなはろまいがな、なああんた――」
 
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