いいえ、そいは違う。男と女とはまた違うじゃなッか」
 「同じ事です。情理からいって、同じ事です。わたしからそんな事をいっちゃおかしいようですが、浪もやっと喀血《かっけつ》がとまって少し快方《いいほう》に向いたかという時じゃありませんか、今そんな事をするのは実に血を吐かすようなものです。浪は死んでしまいます。きっと死ぬです。他人だッてそんな事はできンです、母《おっか》さんはわたしに浪を殺せ……とおっしゃるのですか」
 武男は思わず熱き涙をはらはらと畳に落としつ。

     六の四

 母はつと立ち上がって、仏壇より一つの位牌《いはい》を取りおろし、座に帰って、武男の眼前《めさき》に押しすえつ。
 「武男、卿《おまえ》はな、女親じゃからッてわたしを何とも思わんな。さ、おとっさまの前で今《ま》一度言って見なさい、さ言って見なさい。御先祖代々のお位牌も見ておいでじゃ。さ、今《ま》一度言って見なさい、不孝者めが!![#「!!」は一文字、第3水準1−8−75、115−16]」
 きっと武男をにらみて、続けざまに煙管もて火鉢の縁打ちたたきぬ。
 さすがに武男も少し気色《けしき》ばみて「なぜ不孝です
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