ようじゃったが、どう書《け》えて来申《きも》した?」
浪子は枕べに置きし一通の手紙のなかぬき出《いだ》して姑に渡しつつ、
「この日曜にはきっといらッしゃいますそうでございますよ」
「そうかな」ずうと目を通してくるくるとまき収め、「転地養生もねもんじゃ。この寒にエットからだ動《いご》かして見なさい、それこそ無《な》か病気も出て来ます。風邪《かぜ》はじいと寝ておると、なおるもんじゃ。武は年が若かでな。医師《いしゃ》をかえるの、やれ転地をすッのと騒ぎ申《も》す。わたしたちが若か時分な、腹が痛かてて寝る事《こた》なし、産あがりだて十日と寝た事アあいません。世間が開けて来《く》っと皆が弱《よお》うなり申すでな。はははは。武にそう書《け》えてやったもんな、母《おっか》さんがおるで心配しなはんな、ての、ははははは、どれ」
口には笑えど、目はいささか懌《よろこ》ばざる色を帯びて、出《い》で行く姑の後ろ影、
「御免遊ばせ」
と起き直りつつ見送りて、浪子はかすかに吐息を漏らしぬ。
親が子をねたむということ、あるべしとは思われねど、浪子は良人《おっと》の帰りし以来、一種異なる関係の姑との間にわ
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