草とり
徳冨蘆花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)合戦《かつせん》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)比較的|脆弱《ぜいじやく》な

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)※[#「※」は「あしへん+番」、第4水準2−89−49、68−11]《わだかま》つて

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)茶もおち/\は飲むで居られぬ程
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     一

 六、七、八、九の月は、農家は草と合戦《かつせん》である。自然主義の天は一切のものを生じ、一切の強いものを育てる。うつちやつて置けば、比較的|脆弱《ぜいじやく》な五穀蔬菜は、野草《やさう》に杜《ふさ》がれてしまふ。二宮尊徳の所謂「天道すべての物を生ず、裁制補導《さいせいほだう》は人間の道」で、こゝに人間と草の戦闘が開かるるのである。
 老人、子供、大抵の病人はもとより、手のあるものは火斗《じふのう》でも使ひたい程、畑の草田の草は猛烈に攻め寄する。飯焚《めした》く時間を惜んで餅を食ひ、茶も
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