》しいつまで川水を汲むでばかりも居られぬので、一月ばかりして大仕掛《おほじかけ》に井浚《いどさらへ》をすることにした。赤土からヘナ、ヘナから砂利、と一丈余も掘つて、無色透明《むしよくとうめい》無臭《むしう》而《さう》して無味の水が出た。奇麗《きれい》に浚《さら》つてしまつて、井筒にもたれ、井底《せいてい》深《ふか》く二つ三つの涌き口から潺々《せん/\》と清水の湧く音を聴いた時、最早《もう》水汲《みづく》みの難行苦行も後《あと》になつたことを、嬉しくもまた残惜《のこりを》しくも思つた。



底本:「日本の名随筆33・水」作品社
   1985(昭和60)年7月25日初版発行
   1987(昭和62)年8月10日3刷
底本の親本:「みゝずのたはこと」警醒社
   1913(大正2)年3月初版発行
入力:とみ〜ばあ
校正:門田 裕志
2001年9月12日公開
青空文庫作成ファイル:
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