燕尾服着初の記
徳富盧花

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)逗子《づし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一難|纔《わづか》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「宛+りっとう」、第4水準2−3−26]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)のそり/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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    (一)

 此れは逗子《づし》の浦曲《うらわ》に住む漁師にて候、吾れいまだ天長節外務大臣の夜会てふものを見ず候ほどに、――と能《のう》がゝりの足どり怪しく明治卅二年十一月三日の夕方のそり/\新橋停車場の改札口を出で来れるは、斯く申す小生なり。
 懐中には外務大臣子爵青木周蔵、子爵夫人エリサベツトの名を署《しよ》したる一|葉《えふ》の夜会招待券を後生大事と風呂敷に包みて入れたり。そも此の招待券につきては、待つ間の焦心《せうしん》、得ての歓喜、紛失の恐れ、掏摸《すり》の心配は、果たして如何なりけ
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