を馬鹿にした。久さんのおかみは「良人《やど》が正直《しょうじき》だから、良人が正直だから」と流石に馬鹿と云いかねて正直と云った。東隣のおとなしい媼《ばあ》さんも「久さん、お広さんは今何してるだンべ?」などからかった。久さんは怪訝《けげん》な眼を上げて、「え?」と頓狂《とんきょう》な声を出す。「何さ、今しがたお広さんがね、甜瓜《まくわ》を食《く》ってたて事よ、ふ※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]」と媼さんは笑った。久さんの家には、久さんの老母があった。然し婆《ばあ》さんは※[#「女+息」、第4水準2−5−70]の乱行《らんぎょう》家の乱脈《らんみゃく》に対して手も口も出すことが出来なかった。若い時大勢の奉公人を使っておかみさんと立てられた彼女は、八十近くなって眼液《めしる》たらして竈《へっつい》の下を焚《た》いたり、海老《えび》の様な腰をしてホウ/\云いながら庭を掃《は》いたり、杖にすがって※[#「女+息」、第4水準2−5−70]《よめ》の命のまに/\使《つか》いあるきをしたり、其《そ》れでも其《その》無能《むのう》の子を見すてゝ本
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