]《かしわ》の林が迎えて送る。追々大豆畑が現われる。十勝は豆の国である。旭川平原や札幌深川間の汽車の窓から見る様な水田は、まだ十勝に少ない。帯広《おびひろ》は十勝の頭脳《ずのう》、河西《かさい》支庁《しちょう》の処在地《しょざいち》、大きな野の中の町である。利別《としべつ》から芸者《げいしゃ》雛妓《おしゃく》が八人乗った。今日|網走線《あばしりせん》の鉄道が※[#「陸」の「こざと」に代えて「冫」、下巻−175−15]別《りくんべつ》まで開通した其開通式に赴くのである。池田駅は網走線の分岐点《ぶんぎてん》、球燈、国旗、満頭飾《まんとうしょく》をした機関車なども見えて、真黒な人だかりだ。汽車はこゝで乗客の大部分を下ろし、汪々《おうおう》たる十勝川の流れに暫《しばら》くは添うて東へ走った。時間が晩《おく》れて、浦幌《うらほろ》で太平洋の波の音を聞いた時は、最早|車室《しゃしつ》の電燈がついた。此処から線路は直角をなして北上し、一路|断続《だんぞく》海の音を聞きつゝ、九時近くくたびれ切って釧路に着いた。車に揺られて、十九日の欠月《けつげつ》を横目に見ながら、夕汐《ゆうしお》白く漫々《まんまん》
前へ
次へ
全684ページ中655ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング