弥陀ァ仏」単調な念仏《ねんぶつ》が泣く様に響いて来る。
[#地から3字上げ](大正元年 十一月十日)
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     二つの幻影

 北風が寒く、冬らしい日。
 然し東京附近で冬を云々するのは烏滸《おこ》がましい。如何に寒いと云っても、大地が始終|真白《まっしろ》になって居るではなし、少し日あたりのよい風よけのある所では、寒中《かんちゅう》にも小松菜《こまつな》が青々《あおあお》して、崖《がけ》の蔭では菫《すみれ》や蒲公英《たんぽぽ》が二月に咲いたりするのを見るのは、珍らしくない。
 北へ行かねば、冬の心地は分からぬ。せめて奥州、北海道、樺太《かばふと》、乃至《ないし》大陸の露西亜《ろしあ》とか西比利亜とかでなければ、本当の冬の趣味は分からぬ。秋|日々《ひび》に老いて近づく冬の気息が一刻々々に身に響く頃の一種の恐怖《おそれ》、死に先だつ深い絶望と悲哀は、東京附近の浅薄な冬の真似では到底分からぬ。東京附近の冬は、せい/″\半死半生である。冬が本当の死である国土でなければ、秋の暮の淋し味も、また春の復活の喜も十分には分からぬ。
「おゝ神よ、吾をしてこの春に会うを得せしめ給うを感
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