にやって居る者に借金が無い者は殆《ほと》んどない。二十万坪買収は、金に渇《かわ》き切った其或人々にとって、旱田《ひでりだ》に夕立《ゆうだち》の福音《ふくいん》であった。財政整理の必要に迫られて居ると知られた某々の有力者は、電鉄の先棒となって、盛《さかん》に仲間《なかま》を造りはじめた。金は無論|欲《ほ》しい。脅嚇《おどかし》も勿論|利《き》く。二十万坪の内八万坪、五十三名の地主の内十九名は、売渡《うりわたし》承諾《しょうだく》の契約書《けいやくしょ》に調印してしまった。踟※[#「足へん+厨」、第3水準1−92−39]《ちちゅう》する者もあった。余はある人に斯《こ》う云うた、不用の地所があるなら兎も角、恰好《かっこう》の代地があったら格別、でなければ農が土を手放《てばな》すは魚《うお》の水に離《はな》れるようなものだ、金なんか直ぐ泡《あわ》の様に消えて了う、今更農をやめて転業するなぞは十が十|堕落《だらく》の原《もと》だ。
 売らぬと云う側《がわ》は、人数《にんず》で関係地主の総数《そうすう》五十三人中の三十名、坪数で二十万坪の十二万坪を占めて居る。彼等の云い分はざッと斯様《こう》だ。東
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