かすかな鳴声《なきごえ》を聞いたが、今朝《けさ》見ればオルガンの上に弱《よわ》りはてたスイッチョが居た。彼は未だ死に得ない。而《そう》して死に得る迄《まで》は鳴かねばならぬのである。
 自然は老いて行く。座敷《ざしき》の前を蜂《はち》が一疋歩いて行く。両羽《りょうはね》をつまんでも、螫《さ》そうともせぬ。何に弱ってか、彼は飛《と》ぶ力ももたぬのである。そっと地に下ろしたら、また芝生の方へそろ/\歩いて行く。
 今日はさびしい日である。
 午後は曇《くも》って泣き出しそうな日であった。
 午後になって、いやに蒸暑《むしあつ》い空気《くうき》が湛《たた》えた。懶《ものう》い自然の気を感じて、眼ざとい鶴子が昼寝《ひるね》した。掃き溜には、犬のデカがぐたりと寝て居る。芝生には、猫《ねこ》のトラが眠《ねむ》って居る。
 南から風が吹く。暖かい事は六月の風の様で、目を瞑《つぶ》って聞くと、冬も深い凩《こがらし》の響《おと》がする。
 今日はさびしい日である。
 今は午後四時である。雲を漏《も》れて、西日《にしび》の光がぱっと射《さ》して来た。散りかゝった満庭《まんてい》のコスモスや、咲きかゝった菊
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