も、白くなった小川の堤《つつみ》の尾花《おばな》にも夕日が光って、眼には見る南村北落の夕けぶり。烏啼き、小鳥鳴き、秋《あき》静《しずか》に今日も過ぎて行く。東京の方を見ると、臙脂色《えんじいろ》の空《そら》に煙が幾条《いくすじ》も真直に上って居る。一番南のが、一昨日火薬が爆発《ばくはつ》して二十余名を殺傷《さっしょう》した目黒の火薬庫の煙だ。
[#地から3字上げ](明治四十四年 十月二十三日)
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     秋さびし

 今日《きょう》はさびしい日である。
 ダリヤの園を通ると、二尺あまりの茶色《ちゃいろ》の紐《ひも》が動いて居る、と見たは蛇だった。蜥蜴《とかげ》の様な細《ほそ》い頭をあげて、黒い針《はり》の様な舌《した》をペラ/\さして居る。殺そうか殺すまいかと躊躇《ちゅうちょ》して見て居る内に、彼は直ぐ其処《そこ》にある径《けい》一寸ばかりの穴《あな》に這入《はい》りかけた。見る中に吸わるゝ様にズル/\と辷《すべ》り込んで了うた。
 園内を歩くと、蝉《せみ》のヌケ殻《がら》が幾個《いくつ》も落ちて居る。昨夜は室内で、小さなものゝ臨終《りんじゅう》の呻吟《うめき》の様な
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