《あが》る。諒闇《りょうあん》中の御遠慮で、今日は太鼓《たいこ》も鳴らなかった。
 今日から五日間お経《きょう》をたてる、と云う言いつぎが来た。先帝の御冥福《ごめいふく》の為。
 鶏小屋《とりごや》に大きな青大将が入って、模型卵《もけいらん》をのんだ、と日傭《ひよう》のおかみが知らして来た。往って見ると、五尺もある青大将が喉元《のどもと》を膨《ふく》らして、そこらをのたうち廻《まわ》って居る。卵の積りで陶物《やきもの》の模型卵を呑んで、苦しがって居るのだ。折から来合わして居たT君が、尻尾《しっぽ》をつまんで鶏小屋から引ずり出すと、余が竹竿《たけざお》でたゝき殺した。竹で死体を扱《こ》いたら、ペロリと血だらけの模型卵を吐《は》いた。此頃一向卵が出来ぬと思ったら、此先生が毎日|召上《めしあが》ってお出でたのだ。青大将の死骸《しがい》は芥溜《ごみため》に捨てた。少し経《た》って見たら、如何《どう》したのか見えなかった。復活《ふっかつ》して逃げたのかも知れぬ。

       六

 八月二日。
 紅蜀葵《こうしょくき》の花が咲いた。
 甲州|玉蜀黍《とうもろこし》をもぎ、煮《に》たり焼いたり
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