だが、自然を相手に人間の戦《たたか》う田舎の村では、味方の人数が多い事は何よりも力で強味《つよみ》である。小人数《こにんず》の家は、田舎では惨《みじめ》なものだ。何《ど》の家でも、五人六人子供の無い家《うち》は無い。この部落《ぶらく》でも、鴫田《しぎだ》や寺本の様に屈強《くっきょう》な男子《おとこのこ》の五人三人持て居る家《うち》は、家《いえ》も栄《さかえ》るし、何かにつけて威勢《いせい》がよい。養蚕《ようさん》が重《おも》な副業《ふくぎょう》の此地方では、女の子も大切《だいじ》にされる。貧しい家《うち》が扶持《ふち》とりに里子をとるばかりでなく、有福《ゆうふく》な家《うち》でも里子をとり、それなりに貰ってしまうのが少なくない。其まゝに大きくして、内の※[#「女+息」、第4水準2−5−70]《よめ》にするのが多い。所謂《いわゆる》「蕾《つぼみ》からとる花嫁御《はなよめご》」である。一家総労働の農家では、主僕の間に隔《へだて》がない様に、実の娘と養女の間に格別《かくべつ》の差等《さとう》はない。養われた子女が大きくなっても、別に東京恋しとも思わず、東京に往っても直ぐ田舎に帰って来る。
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