早《もう》故山の墓になって居るのだ。
皆さっさと過ぎて行く。
「御徐《おしずか》に!」
斯く云いたい。
何故《なぜ》人生は斯《こ》うさっさと過ぎて往って了《しま》うのであろう?
[#地から3字上げ](明治四十二年 一月二十二日)
[#改ページ]
蓄音器
あまり淋《さび》しいので、昔は嫌いなものゝ一にして居た蓄音器《ちくおんき》を買った。無喇叺《むらっぱ》の小さなもので、肉声《にくせい》をよく明瞭《めいりょう》に伝える。呂昇《ろしょう》、大隈《おおすみ》、加賀《かが》、宝生《ほうじょう》、哥沢《うたざわ》、追分《おいわけ》、磯節《いそぶし》、雑多《ざった》なものが時々余等の耳に刹那《せつな》の妙音《みょうおん》を伝える。
あたりが静《しずか》なので、戸をしめきっても、四方に余音《よいん》が伝《つた》わる。蓄音器があると云う事を皆知って了うた。そこで正月には村の若者四十余名を招待《しょうだい》して、蓄音器を興行《こうぎょう》した。次ぎには平生世話になる耶蘇教《やそきょう》信者《しんじゃ》の家族を招待した。次ぎには畑仕事で始終|厄介《やっかい》になる隣字《となりあざ》
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