た返事をしなかった。
 北海道から林檎《りんご》やら歌《うた》やら送って来た。病院長の生活は淋しいものらしかった。家庭の模様《もよう》を聞いてやっても、其れだけは何時《いつ》もお茶を濁して来た。余は
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北の国|五百重《いほへ》につもる白雪も
    埋《うづ》みは果てじ胸の焔を
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 訳《わけ》の分からぬ歌など消息の端《はし》にかきつけた。
 間もなく君はまた郷里紀州に帰った。而して相変らず医を業としつゝ、其|熬々《いらいら》を漏《もら》す為に「浜《はま》ゆふ」なぞ云う文学雑誌を出したり、俳句に凝ったりして居た。曾て夏密柑を贈ってくれた。余は
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紀の国のたより来る日や風|薫《かを》る
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 斯様《こん》な悪句《あくく》を書いて酬《むく》うた。或時君の令弟が遊びに来た。聞けば、細君は別居して、家庭はあまり面白くもなさそうだが、遠隔《えんかく》の地突込んで聞きもならず、其まゝに打過ぎた。
 梅雨《ばいう》季《き》は誰しも発狂しそうな時節だ。安達君から、
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梅霖欝々、憂愁如水
[#こ
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