しく、見るに浅ましい。然し此れが自然の約束である。即ち命を捨てゝも命は自己を伝えずには措《お》かぬ。
都々逸《どどいつ》氏《し》歌うて曰く、
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色のいの字と命《いのち》のいの字
そこで色事《いろごと》命がけ
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生殖は命がけ。嫉妬は必死。遊戯で無い。
命がけで入り込んで、生殖の為に一命を果した彼|無名犬《ななしいぬ》の死骸を、欅《けやき》の根もとに葬《ほうむ》った。向うの方には、二本投げ出した前足《まえあし》に頭《あたま》をのせて、頬杖《ほおづえ》つくと云う見得《みえ》でデカがけろりとして眺めて居た。
*
二時間の後、用達《ようたし》に上高井戸に出かけた。八幡《はちまん》の阪で、誰やら脹脛《ふくらはぎ》を後から窃《そ》と押す者がある。ふっと見ると、烏山《からすやま》の天狗犬《てんぐいぬ》が、前足を挙《あ》げて彼の脛《はぎ》を窃と撫《な》でて彼の注意を牽《ひ》いたのである。此犬はあまり大きくもないが、金壺眼《かなつぼまなこ》の意地悪い悪相《あくそう》をした犬で、滅多《めった》に恐怖と云うものを知らぬ鶴子
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