風吹き通す台所《だいどこ》に切ってある小さな炉《ろ》に、木片《こっぱ》枯枝《かれえだ》何くれと燃《も》される限りをくべてあたっても、顔は火攻《ひぜめ》、背《せな》は氷攻《こおりぜ》めであった。とめやが独で甲斐々々しく駈《か》け廻った。煮焚《にたき》勿論《もちろん》、水ももろうてあるき、五丁もはなれた足場の悪い品川堀《しながわぼり》まで盥《たらい》をかゝえて洗濯に往っては腰を痛くし、それでも帰途《かえり》には蕗《ふき》の薹《とう》なぞ見つけて、摘《つ》んで来ることを忘れなかった。襷《たすき》がけのまゝ人に聞き/\近在《きんざい》を買物《かいもの》に駈け歩いて、今日《きょう》は斯様《こん》な処を歩きました、妙《みょう》な処に店《みせ》は出してない呉服屋《ごふくや》がありましたと一々報告した。彼女は忽ち近隣《きんりん》の人々と懇意《こんい》になった。墓地向うの家《うち》の久さんの子女《こども》が久さんを馬鹿にするのを見かねて、余《あんま》りでございますねと訴《うった》えた。唖の子の巳代吉《みよきち》とは殊《こと》に懇意になって、手真似《てまね》で始終《しじゅう》話して居た。唖との交渉はとめや
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