に出て見ると、樺の焚火《たきび》は燃《も》え下《さが》って、ほの白い煙《けむり》を※[#「風+昜」、第3水準1−94−7]《あ》げ、真黒な立木《たちき》の上には霜夜の星|爛々《らんらん》と光って居る。何処《どこ》かの天幕でぱっと火光《あかり》がさして、黒い人影が出て来たが、直ぐ入って了《しま》った。川音が颯々《さあさあ》と嵐の様に響《ひび》く。持て来た毛布までかさねて、関翁と余等三人、川音を聞き/\趣《おもむき》深い天幕の夢を結んだ。
 九月二十八日。微雨。
 関翁は起きぬけに川に灌水《かんすい》に行《ゆ》かれた。
 朝飯後、天幕の諸君に別れて帰路に就《つ》く。成程《なるほど》ニオトマムは山静に水清く、関翁が斗満《とまむ》を去って此処に住みたく思うて居らるゝも尤である。然し余等は無人境のホンの入口まで来たばかり、せめてキトウス山見ゆるあたりまで行かずに此まゝ帰って了うのは、甚|遺憾《のこり》多かった。
 帰路《きろ》余は少し一行に後《おく》れて、林中《りんちゅう》にサビタのステッキを伐《き》った。足音がするのでふっと見ると、向《むこ》うの径《こみち》をアイヌが三人歩いて来る。真先《まっ
前へ 次へ
全684ページ中404ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング