霊になって猶働きつゝあるのだ。
「お馨さんの梅」は、木の生くる限り春毎に咲くであろう。短く此生に生きたお馨さんは、永久に霊に活きて働くであろう。
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     関寛翁

       一

 明治四十一年四月二日の昼過ぎ、妙な爺《じい》さんが訪《たず》ねて来た。北海道の山中に牛馬を飼って居る関と云う爺《じじい》と名のる。鼠の眼の様に小さな可愛い眼をして、十四五の少年の様に紅味ばしった顔をして居る。長い灰色の髪を後に撫でつけ、顋《あご》に些《ちと》の疎髯《そぜん》をヒラ/\させ、木綿ずくめの着物に、足駄ばき。年を問えば七十九。強健な老人振りに、主人は先ず我《が》を折った。
 兎も角も上に請《しょう》じ、問わるゝまゝにトルストイの消息など話す。爺さんは五十年来実行して居る冷水浴の話、元来医者で今もアイヌや移住民に施療して居る話、数年前物故した婆さんの話なぞして、自分は婆の手織物ほか着たことはない、此も婆の手織だと云って、ごり/\した無地の木綿羽織の袖を引張って見せた。面白い爺さんだと思うた。
 其後「命の洗濯」「旅行日記」「目ざまし草」など追々爺さんから自著の冊子を送って来た
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