承知して居るので、表沙汰にはならなかったが、一同《みんな》困り者にして居た。杉苗《すぎなえ》でもとられると、見附次第黙って持戻《もちもど》ったりする者もあった。此れから汁の実なぞがなくならずにようござんしょう、と葬式の時ある律義な若者が笑った。さる爺さんは、齢《とし》は其様《そん》なでもなかったが、若い時の苦労で腰が悉皆|俛《かが》んで居た。きかぬ気の爺さんで、死ぬるまで※[#「人べん+爾」、第3水準1−14−45]《おまえ》に世話はかけぬと婆さんに云い云いしたが、果して何人の介抱《かいほう》も待たず立派に一人で往生した。其以前、墓守が家の瓜畑《うりばたけ》に誰やら入込んでごそ/\やって居るので、誰かと思うたら、此爺さんが親切に瓜の心《しん》をとめてくれて居たのであった。よく楢茸《ならたけ》の初物だの何だの採《と》っては、味噌漉《みそこ》しに入れて持って来てくれた。時には親切に困ることもあった。ある時畑の畔《くろ》の草を苅ってやると云って鎌《かま》を提《さ》げて来た。其畑の畔には萱《かや》薄《すすき》が面白く穂に出て、捨て難い風致《ふうち》の径《こみち》なので其処だけわざ/\草を苅らず
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