る。
[#改丁]
過去帳から
墓守
一
彼は粕谷《かすや》の墓守《はかもり》である。
彼が家の一番近い隣は墓場である。門から唯三十歩、南へ下ると最早墓地だ。誰が命じたのでもない、誰に頼まれたのでもないが、家の位置が彼を粕谷の墓守にした。
墓守と云って、別に墓掃除するでもない。然し家が近くて便利なので、春秋の彼岸に墓参に来る者が、線香の火を借りに寄ったり、水を汲みに寄ったりする。彼の庭園には多少の草花を栽培《さいばい》して置く。花の盛季《さかり》は、大抵農繁の季節に相当するので、悠々《ゆうゆう》と花見の案内する気にもなれず、無論見に来る者も無い。然し村内に不幸があった場合には、必庭園の花を折って弔儀《ちょうぎ》に行く。少し念を入れる場合には、花環《はなわ》などを拵《こさ》えて行く。
墓守のついでに、墓場を奇麗にして、花でも植えて置こうかと思うが、それでは皆が墓参に自家の花を手折って来ても引立たなくなる。平生《ふだん》草を茂《しげ》らして、春秋の彼岸や盆に墓掃除に来るのも、農家らしくてよい。墓地があまりにキチンとして居るのも、好悪《よ
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