いたく》なものだ。
 次ぎは直ぐ仇討《かたきうち》の幕になった。狭い舞台にせゝこましく槍をしごいたり眉尖刀《なぎなた》を振ったり刀を振り廻したりする人形が入り乱れた。唐木《からき》政右衛門《まさえもん》が二刀を揮って目ざましく働く。「あの腰付《こしつき》を御覧なさい」と村での通人《つうじん》仁左衛門さんが嘆美する。「星合団四郎なンか中々強いやつが向う方に居るのですからナ」と講談物《こうだんもの》仕入れの智識をふり廻す。
 夜は最早十二時。これから中幕の曾我対面がある。彼等は見残して、留守番も火の気も無い家に帰った。平作やお米が踊《おど》る彼等が夢の中にも、八幡の賑合《にぎわい》は夜すがら海の音の様に響いて居た。
[#地から3字上げ](明治四十年 十一月)
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     夏の頌

       一

 夏は好い。夏が好い。夏ばかりでも困ろうが、四時春なンか云う天国は平に御免を蒙る。米国加州人士の中には、わざ※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]夏を迎えに南方に出かける者もあるそうな。不思議はない。
 夏は放胆《ほうたん》の季節だ。小心《しょうしん》怯胆
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