つるした何十と云うランプの光の下にがや/\どよめいて居る。無論屋根が無いので、見物の頭の上には、霜夜《しもよ》の星《ほし》がキラ/\光って居る。舞台横手のチョボの床《ゆか》には、見た様な朝鮮簾《ちょうせんみす》が下って居ると思うたは、其れは若い者等が彼の家から徴発《ちょうはつ》して往った簾であった。花道には、一《ひとつ》金《きん》何十銭也船橋何某様、一金何十銭也廻沢何某様と隙間《すきま》もなくびらを貼《は》った。引切りなしに最寄《もより》の村々から紋付羽織位引かけた人達がやって来る。拝殿の所へ来て、「今晩《こんばん》は御芽出度《おめでと》う、此はホンの何ですが」と紙包を出す。幹部が丁寧に答礼して、若い者を呼び、桟敷や土間に案内さす。ビラを書く紙がなくなった、紙を持て来《こ》うと幹部が呼ぶ。素通《すどお》し眼鏡をかけたイナセな村の阿哥《あにい》が走る。「ありゃ好い男だな」と他村の者が評する。耳の届く限り洋々たる歓声《かんせい》が湧《わ》いて、理屈屋の石山さんも今日《きょう》はビラを書き/\莞爾※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]《にこにこ》上機嫌で居る。
 彼等の
前へ 次へ
全684ページ中242ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング