う》のおかみが大急ぎで乾し麦や麦からを取り入れて居る。
北の硝子窓《がらすまど》をしめて、座敷の南縁に立って居ると、ぽつりと一つ大きな白い粒《つぶ》が落ちて、乾いて黄粉《きなこ》の様になった土にころりところんだ。
「来たぞ、来たぞ」
四十五歳の髯男《ひげおとこ》、小供か小犬の様に嬉《うれ》しい予期《よき》気分《きぶん》になって見て居ると、そろそろ落ち出した。大粒小粒、小粒大粒、かわる/″\斜《はす》に落ちては、地上にもんどりうって団子《だんご》の様にころがる。二本松のあたり一抹《いちまつ》の明色は薄墨色《うすずみいろ》に掻《か》き消されて、推し寄せて来る白い驟雨《ゆうだち》の進行《マアチ》が眼に見えて近づいて来る。
彼は久しく羨《うらや》んで居た。熱帯を過ぐる軍艦の甲板で、海軍の将卒が折々やると云う驟雨浴《しゅううよく》「総員入浴用意!」の一令で、手早く制服《ふく》をぬぎすて、石鹸《しゃぼん》とタオルを両手に抓《つか》んで、真黒の健児共がずらり甲板に列んだ処は、面白い見ものであろう。やがて雷鳴電光よろしくあって、錨索大《いかりづなだい》の雨の棒が瀑布落《たきおと》しに撞々《どうど
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