《あわ》たゞしさを抑《おさ》えて、心静《こころしずか》に※[#「人べん+爾」、第3水準1−14−45]の声低く語る教訓を聴かねばならぬ。
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     驟雨浴

 両三日来、西の地平線上、甲相武信の境を造くる連山の空に当って、屡々《しばしば》黒雲が立った。遠寄《とおよせ》の太鼓の様に雷も時々鳴る。黒雲の幕の中で、ぱっ/\と火花を散す様に、電光も射す。夕立が来ると云いながら、一滴も落ちずして二三日過ぎた。
 土用太郎《どようたろう》は涼しい彼の家でも九十一度と云う未曾有の暑気であった。土用二郎の今日《きょう》は、朝来少し曇ったが、風と云うものはたと絶え、気温は昨日程上って居ないにも拘わらず、脂汗《あぶらあせ》が流れた。
 昼飯を食って汗になったので、天日で湯と沸《わ》いて居る庭の甕《かめ》の水を浴び、籐《とう》の寝台に横になって新聞を見て居る内に、快《い》い心地になって眠って了うた。
 一寝入して眼をさますと、室内が暗くなって居る。時計を見ると、まだ二時廻ったばかりである。縁側に出て見た。南の方は明るく、午後二時の日がかん/\照って居るが、西の方が大分暗い。近村の二本松を前
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