り玉川、玉川の孫《まご》であった。祖父様の玉川の水が出る頃は、この孫川《まごがわ》の水も灰《はい》がゝった乳色になるのである。乞食は時々こゝに浴びる。去年の夏は照《てり》がつゞいたので、村居六年はじめて雨乞《あまごい》を見た。八幡に打寄って村の男衆が、神酒《みき》をあげ、「六根清浄《ろっこんしょうじょう》………………懺悔※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]《さんげさんげ》」と叫んだあとで若い者が褌《ふんどし》一つになって此二間|幅《はば》の大川に飛び込み、肩から水を浴びて「六根清浄」……何とかして「さんげ※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]※[#二の字点、1−2−22]」と口々に叫んだ。其声は舜旻天《しゅんびんてん》に号泣《ごうきゅう》する声の如くいじらしく耳に響いた。霜の朝など八幡から眺めると、小川の上ばかり水蒸気がほうっと白く騰《た》って、水の行衛《ゆくえ》が田圃はるかに指《ゆび》さゝれる。
筧《かけひ》の水音を枕に聞く山家《やまが》の住居。山雨常に来るかと疑う渓声《けいせい》の裡《うち》。平時は汪々《おうおう》として声なく音なく、
前へ
次へ
全684ページ中229ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳冨 蘆花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング