くわ》をとった。どさりと赤土の塊《くれ》が柩の上に落ちはじめた。
「皆入れてしまうとよ」囁《ささや》き合うて、行列の先頭に来た紙幟は青竹からはずして、柩の上に投げ込まれた。
 土がまたドサ/\落ちる。

           *

 葬式の五日目に、話題に上った上祖師ヶ谷の行衛不明の兵士の消息を乳屋《ちちや》が告げた。兵士の彦さんは縊死《いっし》したのであった。代々木の山の中に、最早|腐《くさ》りかけて、両眼は烏《からす》につゝかれ、空洞《うろ》になって居たそうだ。原因は分らぬが、彦さんの実父は養子で、彦さんの母に追出され、今の爺《おやじ》は後夫《あといり》と云う事であった。
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     田川

 最初近いと聞いた多摩川《たまがわ》が、家から一里の余もある。玉川上水すら半里からある。好い水の流れに遠いのが、幾度《いくたび》も繰り返えさるゝ失望であった。つい其まゝに住むことになったが、流水《りゅうすい》があったらと思わぬことは無い。せめて掘抜井《ほりぬきいど》でも掘ろうかと思うが、経験ある人の言によると、此附近では曾て多額の費用をかけて掘った人があって、水は地面まで来るに
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