浜田の金さんが云う。
「いやになったって、死にゃえゝが、生命《いのち》がありゃ困っちまうからな」
故人の弟達や縁者の志《こころざし》だと云って、代々木の酒屋の屋号《やごう》のついた一升徳利が四本持ち出された。茶碗と箸と、それから一寸五分角程に切った冷豆腐《ひやどうふ》に醤油をぶっかけた大皿と、輪ぎりにした朝漬《あさづけ》の胡瓜《きゅうり》の皿が運ばれた。皆|蓆《むしろ》の上に車座になった。茶碗になみ/\と酒が注《つ》がれた。彼も座って胡瓜の漬物をつまむ。羽織袴の幸吉さんが挨拶に来た。故人の弟である。故人は丈高い苦《にが》み走った覇気満々たる男であったが、幸さんは人の好さそうな矮《ちいさ》い男だ。一戸から一銭出した村香奠《むらこうでん》の礼を丁寧に述べて、盃を重ぬべく挨拶して立つ。
「幸さん一つ」と誰やらが茶碗をさす。
「酒どころかよ、兄貴が死んだンだ、本当に」と来た時から已《すで》に真赤な顔して居た辰爺さん――勘さんの弟――が怒鳴る。皆がドッと笑う。
「兄貴が死んだンだ、本当に、酒どころかよ」と辰爺さんは呟《つぶや》く様に繰りかえす。
皆好い顔になって立上った。村中で唯一人《ただひ
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