から来たか、犬のデカが不安の眼つきをして見上げつゝ、大きな体を主人の脚にすりつける。
 空は到頭雲をかぶって了った。著しく水気《すいき》を含んだ北風が、ぱっ/\と顔を撲《う》って来た。やがて粒だった雨になる。雷《らい》も頭上近くなった。雲見《くもみ》の一群《ひとむれ》は、急いで家に入った。母屋《おもや》の南面の雨戸だけ残して、悉く戸をしめた。暗いのでランプをつけた。
 ざあっと降り出した。雷が鳴る。一庭《いってい》の雨脚を凄《すさま》じく見せて、ピカリと雷が光る。颯《ざあ》、颯と烈しく降り出した。
 見る/\庭は川になる。雨が飛石《とびいし》をうって刎《は》ねかえる。目に入る限りの緑葉《あおば》が、一葉々々に雨を浴《あ》びて、嬉《うれ》しげにぞく/\身を震わして居る。
「あゝ好いおしめりだ」
 斯く云った彼等は、更に
「まだ七時前だよ、まあ」
と婢《おんな》の云う声に驚かされた。
 夕立から本降りになって、雨は夜すがら降った。
[#地から3字上げ](大正元年 八月十四日)
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     葬式

       一

 午前十時と云う触込《ふれこ》みなので、十一時に寺本さんの
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