もぶっかけてざぶ/\流し込むのである。若い者の楽《たのしみ》の一は、食う事である。主人は麦を食って、自分に稗を食わした、と忿《いか》って飛び出した作代《さくだい》もある。

       九

 九月は農家の厄月《やくづき》、二百十日、二百二十日を眼の前に控えて、朔日《ついたち》には風祭をする。麦桑に雹《ひょう》を気づかった農家は、稲に風を気づかわねばならぬ。九月は農家の鳴戸《なると》の瀬戸だ。瀬戸を過ぐれば秋の彼岸《ひがん》。蚊帳《かや》を仕舞う。おかみや娘の夜延《よなべ》仕事が忙しくなる。秋の田園詩人の百舌鳥《もず》が、高い栗の梢から声高々と鳴きちぎる。栗が笑《え》む。豆の葉が黄ばむ。雁来紅《けいとう》が染《そ》むを相図に、夜は空高く雁《かり》の音《ね》がする。林の中、道草の中、家の中まで入り込んで、虫と云う虫が鳴き立てる。早稲が黄ろくなりそめる。蕎麦の花は雪の様だ。彼岸花と云う曼珠沙華《まんじゅしゃげ》は、此辺に少ない。此あたりの彼岸花は、萩《はぎ》、女郎花《おみなえし》、嫁菜《よめな》の花、何よりも初秋の栄《さかえ》を見せるのが、紅く白く沢々《つやつや》と絹総《きぬぶさ》を靡《
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