スナヤ、ポリヤナ[#「ヤスナヤ、ポリヤナ」に二重傍線]で御厚遇《ごこうぐう》を享《う》けて居ました。其折お目にかゝった方々や色々の出来事を、私は如何様《どんな》にはっきりと記憶して居るでしょう。正に今日でした、私は彼《あの》はなれからペンとインキを持ち出して、彼|楓《かえで》の下の食卓に居られる皆さんの署名を記念の為に求めました。其手帳は今私の手近にあります。私は開《あ》けて見ました。皆《みな》在《ある》焉。先生のも、あなたのも、其他皆さんの手によって署せられた皆さんの名が歴々《れきれき》として其処にあります。インキもまだ乾かないかと思われるばかりです。然るに、想《おも》えば先生の椅子《いす》は最早《もう》永久に空しいのです。此頃は楓《かえで》の下の彼食卓も嘸《さぞ》淋《さび》しいことでしょう。私はマウド[#「マウド」に傍線]氏の先生の伝を見て、オボレンスキー[#「オボレンスキー」に傍線]公爵夫人マリー[#「マリー」に傍線]さんも、私がお目にかゝって間もなく死去された事を知りました。私はマリー[#「マリー」に傍線]さんが大好《だいす》きでした。最早あの方もホンの記憶になってしまわれたの
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